野遊の将棋物語 12 果てしなき戦いの世界

その棋士を応援するとき、たいていはタイトルを獲るようにと、特に可能性のある対局には声援を送る。奪取と防衛に声援を送る。

2021年正月、今の豊島キュンに声援を送るとしたら名人奪還だろう。順位戦のゆくえはいかにも危うくおぼつかないが、まだ可能性はある。サイタローがトップを走っているが、彼がナベ名人に、四局先行できるとは到底思えない。勝てるのはキュンだ。聡太君はまだだし。

次に叡王竜王の防衛と、さらに新たなるタイトル奪取への期待。これはエンドレスに続いていくだろう。

棋士とはそこはかとなく厳しい。

次から次へと、強くて勝てば勝つほど、もっともっと強くなって天まで昇れと期待される。そこに日常生活はない。

そんなことが実際にできるものだろうか。

ふと力を抜けばたちまち追い越される。

どこまで行っても戦わなくてはならない。