千の記憶(12)4歳まで

4歳までの記憶は、具体的には数えるほどしかないのか。

もっとありそうなものだ。後程思い出すなんてことはあるか?

エリはこうだったと父母や姉たちから言われたことはほかにもあるが、自分の記憶としていえるのはごくわずかだ。

具体的なエピソードではなくとも、父の温かい手や、母の優しい言葉などは、深い記憶の底にある。それは数では表せないけれど、幼いころのエリを包み込んで、その先への道に、いざなってくれている。