千の記憶(10)帽子 1

近くの海岸に、父が子どもたちを連れていく。そうだ父は子どもたちをとてもかわいがってくれた。

ピコがココの掌のビスケットに飛びついたのを叱った時も、あれは今後、赤ちゃんに飛びついてはいけない、これを許すと、ミルクの匂いが残る口元に噛みついたりすることもあり得るから、しっかり躾けたのだ。猫を折檻で躾けることができるかは不明だが、ピコは確かにあの後、決して人の手のお菓子を狙わなかった。・・・ああ、またピコのこと書いてる・・・

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さて海岸に遊びに行く日。ココは幼くて、母と家にいた。アネとマチははしゃいでいた。エリは行きたくなかった。きっとエリはたいていそうなのだろう。わざわざ出かけたくなかった。ひとり遊びが好きで、誰かを道連れにするわけでもない。どうして周囲はどこかに行こうとかワイワイしているのか?

けれどエリは促されて行くことに。外は陽が照っているので帽子を。エリはかぶりたくない。帽子をかぶりたくなかった!どうしてって今のエリがあの日の自分を解説できないが、嫌だったことは覚えている。

どうして嫌なのだろう、どうしてああいうとき、エリは、かぶりなさいと当たり前に言われることが凄く嫌なのだろう。その嫌なことを妥協して一歩進むと、また嫌なことを強要される。だからエリはいつも、大人たちから、あまのじゃくと言われる。行為は確かにあまのじゃくだ。でもあまのじゃくになりたくて何でも反対しているのではなく、嫌なことを言われるからなのです(^^;