大黒屋光大夫を辿る旅 28 ソフィアの池

エカチェリーナ宮殿の庭を歩いて行くと、「ソフィアの池」がある。光大夫が、この池の前で、彼を慰めて歌を歌ってくれた女性と、親しくなったというエピソードがある。望郷の憂愁を癒されたソフィアの池。「ソフィアの歌」というのがあり、ロシアに古くから伝わる歌のようで、やがて形を変えて軍歌にも歌われるようになったそうだが、団長の論説(『大黒屋光大夫追憶』衣斐賢譲著)では、著者の検証により、これはまことにソフィアが、光大夫に友情以上の思いを以って歌ったもので、光大夫のために作られたものであるのではなかろうかと言っている。野遊としては、そうではないと思うのだが、美しいソフィアの池にたたずめば、この論説もまた、真実味を伴って胸に浮かんでくるのだった。

ソフィアの池を出口に向かってしばらく行くと、宮殿と同じ模様の、美しい建物がある。エカチェリーナの宿泊場所であったそうだ。豪華な装飾の白くて広い階段が、ずっと上ま続いている。階段、登りたいな。遮断のロープもない。

アリスに「あの階段は登ってもいいの?」と聞くと、それは自由ですとアリスが言うので、ゾロ〜ゾロ〜と歩く集団からちょっと抜け出して、野遊は一気に半分まで駆け登った。ふり返ると、続く「勇者」が3人。いずれもご婦人で、女性はこういうことに興味を持つのだろう。

下では、歩き続けているはずの集団が、なんとなく立ち止まって「だれもいない階段を登っちゃったよ・・・」という感じでこちらを見あげている。みんなで登ればいいのにね。

友達になった寅ちゃんが、下で写真をパチリ。ありがとう寅ちゃん。これは後日、大きな白い階段の途中で、寄り添った4人の仲間たちの、すてきな思い出になった。主役はもちろん階段です。