野遊の将棋物語16 感想戦で努力して喋らなくてもいいんだよ

 大盤の感想戦で、午前中にキュンに敗れた飯島栄治は口数が多く、何やらエキサイティングしていて、司会の棋士がちょっとフォロー(彼のための言い訳のようなもの)していたほどだった。キュンが大盤に向かって何か言おうとしてもかぶせてばかり。キュンはそういう時は口をつぐんでしまうのだけど、いつも「喋れよ」とかコメ民に言われるのを気にとめてか、最近言葉を発するので、それが実は意識的に(ちょっとムリして)発するように感じていた野遊は、そのキュンの努力を阻止されるようでいちいち気の毒に思った。

聡太との大盤感想戦では、それがなかったので色々と感想を述べながら駒を動かしていたが、それはそれで「負けたときはよく喋るんだ」などとも言われ、まあそんなバカらしいコメにイラッとくる必要はないのだけど、必ずそういう変な子が出現する。「豊島は秘密主義だから喋らないのだ」などと書く悪意ある輩、たいていキュンの対局に入れてくるので、邪魔したいのだろう。野遊は怒ってる。