野遊の将棋物語39 竜王戦第2局

豊島竜王の登場はいつも静かで美しい。

頭や肩が動かない。動く道路に乗っているみたいにまっすぐ歩いてくる。

封じ手を開いてから、それまで互角だった形成が少しずつ崩れていった。15時ころには先手の竜王が押され気味になっていき、聡太君が主導権を握っていった。9筋へと、後手の桂馬が狙う先を放置して、先手は2筋の飛車前に、手駒の歩を打った。

その先は竜王が思い切って出た構想だったようで、後手長考に入った。思惑外れだったのだろう。が、当然聡太も見分ける。9筋についての戦いをひとまず置いて、先手の意図を解いていった。

そこからは先手が太刀打ちしきれないまま進んだ。こうだったら、と思うところも、後手がそれを見切っているので、予定がことごとく思うように進まないのだ。先手も王に迫っているのに、ああ一度に二手、指させてもらえたら(^^;、なんて思っているうちに形成はどんどん傾いていって、それでも70手まで指し、17時過ぎに竜王投了。

なんと残酷な・・・。

羽生青年と谷川さんがよく話題に出るが、その時とは違うよ・・・

聡太君はただ頭がいいとか強いとかいうのではないからね。「異質」なんで。同じ土俵でどちらが強いのテーマではない。

一人そこに立たされて戦うキュン。それも人間分野で強いからだけどね。

励ます力もない野遊だけど、じっと見つめているから。ずっと応援していくから。

ふたかたともまことに佳き棋士だ。