朝日連峰縦走(11)以東岳から狐穴小屋に向かう

遭難碑のある所、以東小屋への下りが始まる手前の左側に直角に、登山道はあった。それはガスで視界の狭まった足元をよく探して、出てきた道だ。「らしく」出てきたならともかく、道幅が半分になった急な下りの直角曲がりで、正道と思えずに思案してしまうほどだった。地図でこちらの方向とわかっていても、もし視界が効いたら、ほかにもっと広い幅の道が出てくるかもしれないとか思ってしまったのだ。

「道標はありますか」「あります」という以東小屋番の言葉を頼りに探したが、それもない。彼女は質問の応答に、あと一言の補佐がなく、まっいいやと出てきたが、もっと食いさがって聞けばよかったと後悔した。

この場所ではないのかもしれない、もう少し戻ろうか、いや、でも、など思い思い、時間をかけてじっくりと探すと、足元の白い石に、何か字のようなものが書いてあるのが見つかった。マジックペンのような感じで、ほぼ消えている。判読しがたいが字だったようで、書いてあるとしたら「寒江山」か「竜門山へ」とか「大朝日方面」かもしれない。当てはめて見たがどうも違う。

小屋名かもしれない。狐穴小屋かもと思うと、どうやら当てはりっぽくなった。まさか「道標」ってこれか?  よし。降りて行って道が荒れてきたりしたら引き返す心つもりで行ってみよう。と、降下をはじめた。

降りはじめると道はちゃんとついていて、次第に右へ右へと続いて行き、これが正道だとわかった。てことは、あの石が「道標」のようでして(ーー;)
(この2年後、野遊は再びここに立ち、晴れ渡った視界の効く中で、実は道標があったことを知るのだった。行きに見ていたかもしれない。けれど、多分この道標の書き方が、朝日不慣れの野遊には意味不明だったのだろう)(今年見た道標ならよくわかる)

小屋に降りて登り返して探しまわって、40分くらいムダにしてしまったので、ここだとわかってからは、歩きやすい道では、しばしにわかトレイルランになって進んだ。