朝日連峰北方 17 狐穴小屋 2012・9・11(火)泊

ryo-rya2012-10-21

画像は登山道にあった。
右は野遊の靴。
熊でしょうか・・・

ガスが以東岳のほうを取り巻き、野遊は登って行った人を想った。今ごろ大変だろうな、中先鋒の先の登り道だけでも、視界が効きますようにと祈った。あそこは、ガスに巻かれると、どこを歩いていいかわからないような道だったと記憶していたからだ。
(これは次の日ここを歩きながら現状を書こうと思います)

17時、俊足の人らしいからそろそろメドが立つかなと思うころ、ガスが薄くなって、ゆるい夕陽が射しだした。ホッとした。

野遊、今夜もひとりかな。以東から降りてくる人が今からいるとは思わないが、可能性としてはある。角力尾根からくる人がいるとも思えないが、大井沢からずんずん歩いてくる人ならあり得る。でも何の気配もない。

寒江山の稜線を見あげると、お、ひとりだれかがこちらに向かって歩いている。小屋番の安達さんかもしれない。でも今日は平日で、番人さんは不在の日だ。ということは登山者か。「山じいだ!」と野遊は思った。

小屋に急いで戻って、散らばった荷物を片づけてまた外に出た。そして再び稜線を見あげると、先ほどの人は、同じところにいた。それからずっとその人を見つめていたが、動かなかった。・・・木だった。

明日あそこを歩くとき、あの木に文句を言ってやろうと思った。(明日になったら忘れていた)

水場のそばに、質素なベンチがあるので、そこで夕食にしようかと思ったが、寒いので中に入ったら、中はかなり暗くなっていた。夜が来るのだな、でももう怖くないぞ、昨夜もひとりだったから。

ドライフードのピラフにお湯を入れて、昨日と同じワカメスープを飲んだ。しばらく一人で山の歌を歌った。次から次へと歌った。懐かしい山岳部の先輩たち、同輩たちと、テントの中で歌ったものだ。彼らの笑顔が浮かび、「今では遠くみんな去り、友を偲んで仰ぐ空♪」と声を張りあげる。だれもいないのもいいものだ。

すっかり日が暮れると、またガスが流れてきて真っ暗になったので、ストレッチをしてからシュラフに潜り込む。狐穴小屋には毛布が何枚もあるので、すごく助かった。本当に、これ以上あろうかというほど正真正銘の「ボロ毛布」だ。寄贈したいなあ、でも運べない。ボロフさん、安達さん、ありがとう。

この日、野遊は寝る前に「とっておきの秘薬」を飲んだ。それは昨秋、この小屋で、山じいが就寝前に野遊に手渡してくれた一粒の錠剤だ。睡眠導入薬だそうだ。
あの日野遊は、日暮れ沢を一生懸命登って疲れていたし、山じいと焼き肉パーティをして、ビールやお酒をたくさん飲んで、すっかりリラックスしていい気分になって、この薬を飲まずに寝たのだ。もし寝つけなかったら飲もうと思ったが、寝てしまった。

以来この薬は「いつか飲もう」と、1年間、お守りみたいに持っていたのだ。明日は未知の相模山を行く。今こそ飲もう。
使用期限なんか考えていません ʅ( ^⊖◝)ʃ