野遊の12月 13「ツアー登山体験談」(8)袋田の滝

林道を下ればバスが待っている登山口、逆を行けば袋田の滝を見物できる。1時間自由行動となり、皆さんどうするかと見ていたら、バスのほうにゾロゾロ行く人が多かった。そこにはお店もあって、お茶したりできるとか。

でもまだ汗もかいていないうちに林道に降り立ち、そのままお店に行って1時間休憩して帰りのバスに乗るのはどうも・・・と思ったが、野遊は、このたびはとにかく流れに従おうと心に決めていたので、黙って様子をみていた。

すると顧客の一人が「自分は滝を見物したいのだが、だれか行きませんか」と言い、数人が賛成し、歩きはじめたので、尻尾について行った。


袋田の滝は広い岩面に幾筋もの滝ができていて美しかった。ひとりの顧客がカメラを手に「撮ってもらえますか」と言うので、ワンショットを撮ってあげたら、我も我もで数人の顧客の写真を撮ってあげた。ツアー以外に外人観光客のカップルがいたので、「Lets together」とツーショット。

袋田の滝は、もっと上から見る場所があり、そこへ行こうとしたら顧客方、ゾロゾロと引き返すのでがっかり。ついて行った。それから林道を戻ってバスの停車場へ歩いて行った。

林道を歩きながら顧客が「こんなに道路を歩くのでしょうか、長すぎると思いませんか。道を間違えているのでは?」と不安そうに言った。顧客方は、朝、渡されたコピーの簡略地図しか持っていないようで(全員ではないかもしれないが、野遊の手ごたえではほぼ、と言えるくらい、皆さん地図を持参していない)、自分がどこを歩いているのか把握していないのだった。(このことについては次回書く)。

野遊も土地勘のないところだから断言はできないけれど、方向的にこの道なので、大丈夫と言って歩いた。地図を見て大丈夫と言っても顧客方は信じられないようで、「ここに来たことがあるのですか」と聞いてくる。「さっきの曲がり角を行ったらバス停かも」とか不安を口にするが、そんな方向に行くわけがないのだった。
でもドヤドヤ歩いて行くうちに、前方にバス停が見えてきた。

バスのそばで、ガイドが顎の血をぬぐっていた。あれだけ派手に滑って転げたのだから、本人の感覚としてはかなりの衝撃だったはずだ。ガイド隊長なのだし、気まずいだろう。
野遊、お礼を言った。
「痛い思いをされたのに、ふもとまでちゃんとわたしたちを導いてくださいまして、どうもありがとうございました」
若いほうのガイドにもお礼を言った。

バスが出るとき、一人の顧客がまだ戻っていなくて、しばし待ち、やがてどこかで迷ったとかで、若いほうのガイドが迎えに行ったりして無事帰還。
「こういうときひとり行動はすべきでないのよね」と、隣の座席のご婦人が言うので、野遊、自分でなくてよかったと思ったものだ(>_<)

バスの中でガイドが「私が(滑る)見本を示してしまい・・・」とおどけたつもりで言ったが、しんとしてだれも乗らず。
「このコースは今後検討しなおす必要があると思います」と、ガイド。

それから袋田温泉に寄って帰った。隣のご婦人のお話をずっと聞きながら・・・ふう、疲れた。東京着17時40分。