焼石岳 10 すごい林道

車は、前回見覚えのある胆沢(いさわ)を通り、いよいよ林道に突入していった。中沼登山口に向かっている。そうか、では途中下車して林道を歩くのだな。

ただでさえ相当神経を使う林道で、それが端が崩れている箇所が出てきても、車はガタンガタンと進み、もうここらで下車して歩いたほうがいいのでは、というようなところに来たが、リーダーは強引に進めていく。やがて運転を代わったりしながらボコボコガタガタグズグズ道を進み、ついに登山口まで行ってしまった。

崩壊当初は通れなかったようだが、日が経つにつれて地元の人たちが、行き慣れた林道ということで、ガンガン通ったのだろう。日ごろから焼石岳に登る地元の人も少なくないようだ。現に、中沼登山口にはすでに数台の車が駐車していた。あの林道を通過してきた車たちだ。こういうのを「猛者(もさ)」というのだろう。野遊は全く驚いたね。

大体こんな風にここに書いても、普通はわからないと思う。あの林道を、あの登山口まで車で行くのがどんなだか!行った人たちは別に〜という感じかもしれないが、すごい技術というか、知っている感覚、慣れている強さというか。うまく表現できないけど、もうこの段階から、彼らはすごい。

もちろん、ちーちゃんも野遊も、リーダーたちの心遣いを感じていた。リーダーたちは、関東地方から東北の焼石岳に登りたくてやってきたわたしたちに、林道歩きをなるべく少なくしてあげよう、車を少しでも上方に持っていこう、としてくれていたのだ。彼らは、ちーちゃんと野遊を乗せたまま、代わりばんこに下車した難路の個所もあったのだ。本当にとても大変だったのだ。

野遊だって役に立ちたかったけれど、どうにも動けなかった。できないのに協力しようとするのはかえって迷惑だからじっとしていた。まことに「リーダーに任せよう」だった。

それにしても大自然の真っただ中という感じの林道で、それこそ空と木と草と土のほかに何も見えないのだ。
その木々の緑が一体何種類あるのかというほど「緑とりどり」なのだ。

この林道が晩秋には雪に包まれ、冬を迎えると、さすがのリーダーも登山口まで入れなくなるそうだ。入口に車を置いて、徒歩で林道を登っていき、これ以上行けなくなるところまで行くのだという。それが、ただ林道をゆるゆると登っていくだけでなく、途中で近道をたどるそうだ。きっとそんなときは雪まみれになるのではないかな。ちょっとおもしろそう。いやいや大変そう。でもやっぱりおもしろそう。