焼石岳 14 魔のコース

山神のご加護により魔の渡り廊下を過ごし、4人で大きな岩の上に立ったり、向こう側に立ったりしてリーダーを待った。やがてリーダーの姿が現れた。みんな黙って見ている。やっぱりここは一種のポイント箇所なのか。リーダーはストックで数度川底を探り、こちら側にやって来た。なんだ、あんな簡単にできるのか、放っておけば野遊だってストック持って渡れたのにね。と思えてしまうほど自然体でした。全くリーダーには感心する。

道にはリボンなどがついてはいたが、渡渉で急に曲がるところなど、霧だったらわかりにくそうだ。なんでこんなに水だらけなの焼石岳ってば。ここは谷合で陽も入らない。明るい気分になれないまま歩いた。

歩行者の序列はその場その場で規制が緩く、そのときは野遊がトップを歩いていた。後方で写真家さんの声がした。ナメコが生えているとのこと。天然のナメコを野遊は見たことがないので、見てみたいと思ったが、もうひと曲がり先まで登ってきていたので、戻るのが嫌だった。

野遊の後ろを歩いていたちーちゃんが下方に戻っていき、大量ナメコだ!とか言っている。野遊は道に腰かけて休んでいた。ちーちゃんがビニール袋にいっぱい入ったナメコを持ってきた。「まだまだあるので採っている」そうだ。これはすごい量だ。ちーちゃんはその袋を、野遊のザックのサイドポケットに入れた。「はい、採らなかったので運んでね」(^^)/

それからもしばらく待ったが彼らはゆっくり採集していた。

これであとは普通の登山道かと思いきや、それからもしつこく水水しい道が繰り返され、地図だけではわかり切れない道だった。野遊は自分の位置が把握しきれずに、かなりストレスを感じた。彼らと共にいるので、これでいいのではあるが、自分が確認できないことって、おぼつかないものだ。登っているのは我が身であるという気が薄れ、ただ、誘導されるままについて行く、連れて行ってもらっているということが、自分をつかめずに疲労する。

こんな上に来てもなお、まだ水があるのか、まだ水に沿って歩く道があるのか、では到着点はまだまだか。正午を過ぎた。