流氷旅行 11 地吹雪

昼前に吹雪いてきて、バスの窓は凍ってしまった。あっという間に道路に雪が積もった。鎌倉だったら雪が降って、積もるかなあと思っても、道路に落ちる雪はみるみる消えていき、ビショビショになるのがせいぜいで、まず積もることはない。まれに積もっても、どのくらい持つか、といったところだ。今冬はついに雪は降らなかった。だからこのように、降ってきたと思ったら当然のように積もるなんて、すごいなと思った。すごいなと思っている間もあらばこそ、さらに終わることも知らぬげにどんどん積もっていって、恐ろしいようだ。

旅行先ですてきな景色や温かい人の情に接して「ここに住みたいな」などと思うことがあるが、この素晴らしい景色と美しい現地の人の情に触れても北海道に住みたいと思えない、あ〜住めないわ。

バスが止まってわずか15分足らず歩いて日本最果ての海、宗谷岬に「辿り着く」。見渡す限り真っ白。もう深くなっている雪を避けて歩く。凍った道をツルツルしながら行くのだがアイゼンを使用するようなものではなかった。気をつければ普通に歩けるのだが、ツアー・クライアントの中には、一足ごとにヨチヨチ、グラグラしながら進んでいる人もある。関東人は慣れなくて怖いのだろう。現地の人たちにとってみれば何でもない所作なのだろう。雪国の人はバランス感覚がいいと言えるかな?

ランチタイムは大きな会館の中で、紋別特産のホタテのアラカルトランチ。このホタテが味わい深くて美味だった。いつぞや家族4人で北海道に旅行した折、濃厚なホタテに舌鼓を打ち、帰ってからしばらく、水で薄まったようなスーパーのホタテが食べられなくなったことがある。北海道のホタテは特に美味、そしてこの紋別のホタテはその中でも名産らしい。

このホタテランチが今回の旅行の食事で最高だった。ほかのお食事は特筆することもない。何せ安価な流氷旅行というキャッチフレーズだったので、流氷が見られればこれで充分。

この会館の建物に入るのが、バスから3分もしないのに、全身雪まみれになって、コートの襟裏やポケットや、袖の中にも雪が詰まった。雪ってきめが細かいのだな〜!!!

身をかがめて会館に向かって歩いたが、目の前の道路は、雪がグルグル巻いていた。初めて道路の地吹雪を体験した。冬の北海道に立ったことがなかったので、知ってるつもりが恐れ入った。