秋のヒマラヤトレッキング45 悪路、タキシンドゥの下り

タキシンドゥTaksindu2960からリングムRingmu2720への道は悪路で、足をどう運んでいいかわからないようなガタボコ下り。雨や雪で削られるままの姿をさらしている。その道とも呼べぬ道を住民たちは、いとも自然に近所の道と受け入れて往来しているのだ。治す気はないみたい。比べても今さらながら、日本だったらこれは通行不能の「雨径(うけい)」だ。まあだからこのトレッキングロードは一般的でなく人数も少ないのだろうが。ネパールの地図にはバリエーションルートなんて表現はないし。

膝をガタガタさせながらゆっくりと、岩やストックの助けを借りてへっぴり腰で下っていると、端道で休憩している先ほどの旅芸人たちに出会った。彼らは微笑みながら野遊を見ている。蔑視の感じはない。ヘタな旅行者ほど現地民の世話になり、現地民の糧になる。日本の山ならあまりにヘタな登山者は、現地民は軽蔑の目を向け、熟達者と自認する登山者たちも迷惑そうな顔をするだろう。でもネパール人にはこれすべてお金なのだ。という言い方は彼らに失礼かもしれないが、それもまた日本の感覚であり、別に失礼でもないと思っていいようだ。実際彼ら自身も当たり前のようにそう言うのだ。

旅芸人たちは手に手に楽器を持っておしゃれした姿のまま歩いている。そして次の村でも又歌ったり踊ったりして稼ぐのだろう。

やがて彼らは腰をあげて、野遊をひょいと通り越してサアアッと素麺流しの竹筒に乗ったように消えていった。