野遊の将棋物語1 豊島キュン

豊島将之という名前を初めて聞いたのは、今を去ること20年ほど前、将棋の冊子で紹介されていた日のこと。

齢9歳にして奨励会に入会したとかで、天才少年と書かれてあったこと。

将棋の本はたまに見ていた程度だったが記憶に残っている。というのは、そのさらに8年ほど後、豊島将之という名を再び目にする日が来たからだ。

それはその年のプロ入りの紹介記事だった。この名を見つけて、「ああ、この子覚えている」と思ったのだった。

今思うと2007年、野遊が劇団てんびん座をたたんだ頃のことだ。なので気持ちにゆとりが出ていたのだろう。

この名が、それから少しずつ野遊の中で成長していって、こんなにも興味津々な、愛おしい存在になるとは思いがけないことではあった。