野遊の将棋物語2 豊島キュンキュン

 野遊には、PCで将棋観戦などは、ただでさえTVをまるきり見ないで暮らした劇団てんびん座時代の年月が長くて、やり方がわからなかった。
時々、あいている日曜日のNHK杯を観て楽しむのがせいぜいだった。
でも普通の人間生活に戻って過ごせば、そのうち少しずつ周囲の様子も見えてくる。
 
2014年、豊島将之七段(24歳)が電王戦でAIと対局して勝ったニュースが、さすがに全国版で流れた。
対局日の4か月前から、対局する5人の棋士に預けられたそれぞれのAIを、彼はなんと千回も対局して研究を重ねたという。野遊はやがてYouTubeで、その時の様子を繰り返し見ることができるようになった。
豊島少年は、豊島青年になっていた。