千の記憶(15)14年間

あとから聞いた話だが、母は疲労困憊して気が遠くなりそうになっては自分を励まして頑張った難産の末、初めての男の子なのに死産だったと布にくるんでおいたところ、産婆さんが持ち上げて、しばらく揺すっていたら、やがて泣き声がして赤ちゃんは生き返ったとか。

母はどんな大変な状況からどんな大変な思いをして末子を出産したのだろう!何と芯の強い人だろう!

ボクはだから生まれた時は頭が長くてトウモロコシみたいだった。エリはボクの寝姿を覚えている。

母の妹はその時すでに同居していなかったし、エリをかわいがってくれたという曾祖母も今は亡き人で、両親に5人の子供たちという図は、それからずっと続いたのだ。アネが24歳で結婚する14年後まで。

この14年間は、父、母、アネ、マチ、エリ、ココ、ボクの、その先どんな長い歳月が続こうとも、決して濃度を譲ることのない深い深い世界となって流れていくのだった。