マナスルBC ヘリトレッキング 14 モルゲンロード

朝の5時半に、ゆうさんというサブリーダーが部屋にそうっと入ってきて、思わず起き上がろうとしたら「起きちゃダメ!」と言われた。そうだった。昨日、静かに寝ていてと言われていた。覚えていたけど起き上がってしまった。

【この、ゆうさんというサブリーダーの「・・・しちゃダメ!」は、この朝より、何回、何十回、野遊は聞くことになっただろう。野遊の耳に、心に、ゆうさんの声が、今も聞こえるのです。】

 

静かに寝ている状態で、血中酸素飽和濃度を測るのだ。

でも実は野遊は、もうさっき一度起きて外に出てしまっていた。それは、ロッジの屋根の向こうに、マナスルが見えていて、モルゲンロードを見たかったからだ。

隊員たちもぞろぞろ出てきて、みんなで見上げたけれど、残念なことに、雲がかかって頂上は隠れていた。

それからも毎朝5時ごろに外を見たが、結局モルゲンロードを見ることはできなかった。やはり梅雨時なのでお天気がぐずついていたのだ。

サミットアタックに合わせて計画されたトレッキングなので、こういう事態になっているのだろう。申し込むとき、梅雨時なのになあと思って、AG隊にではなく、最初に知らせてくれた天気予報士の猪熊さんに、メールで質問をしたら、ちゃんと返信を下されて、説明があったが、だからトレッキング隊はどうなのよ?ッという、疑問の残るような返信ではあった。その意味が、サミット隊と組んでるのだと知った時に、わかった。

もう仕方ない。

で、パルスオキシメーターで計ってくれるサブリーダーのゆうさんという人は、お隣のベッドにいる女性よりもずっと時間をかけて野遊の濃度を計っていた。で、「息吐いて。もっと長く」と言う。【この言葉がこれから、野遊に、何回、何十回、繰り返されたことだろう。マナスルトレッキングとセットみたいに忘れられない。】