マナスルBC ヘリトレッキング 21 その日の朝

2023年9月8日(金)BCに登る日の朝。

暗い部屋にゆうさんがそうっと入ってくる。この日は今にも降り出しそうな曇天で、部屋に居ても、マナスルのモルゲンロードは到底見られないとわかったので、野遊は、ベッドの中でおとなしくしていた。

ゆうさんは何も言わないで野遊の左手をシュラフから取り出してパルスで測る。ずいぶんいつまでも。で、何も言わないで部屋を出て行った。

まだ5時を過ぎた頃なので、野遊も、隣のベッドの女性も暗い部屋でじっとしていた。するとまた誰かが入って来たので、ゆうさんかな。その人は黙って野遊の手をシュラフから出し、また測っている。あれ…?ゆうさんタッチと違う。どこということなく違う。しいて言えば力強い感じかな。近藤隊長かなあ暗くてわからない。

これも長い時間だった。(あとで隊長だとわかった)

で、また少し経つと、な、なんとまた来た。部屋は薄暗くなっていて、今度はゆうさんだとわかる。昨日一昨日と同じ、優しいタッチで野遊の酸素濃度を計りながら、今度は「息して」「もっと吐いて」とか言う。

3回も長~く計られて、野遊はきっともうだめだな。と感じた。部屋が明るくなってきた。

外に出て行くと、隊長が野遊に、血中酸素濃度がなんとも低いことを告げ、BC滞在2日間を懸念して、サマで停滞することとなった。

いつもみたいにソロだったら行ってたかな。馬を使用したかな。モレーンが凍っていて馬のヒズメが滑ったら、馬上人は転がり落ちるかな・・・などなどぼんやり思っているうちに、みなさん出発していった。

やっぱり行きたいんだな、少し泣きそうになった。