鎌倉駅前の交差点物語(16)2時間の訴え

実態と実数と、実感を訴えたあとは、ここにいる担当者の方々の心に、何が残ったかということに絞られる。自分たちの精いっぱいを尽くして待つしかない。
お茶が出た。女性職員が湯飲茶碗に薄いお茶を運んでくれた。千一の前にも置かれた。
どうやって飲めってか。ありがたい気持はあれど鼻白む。
わかってないな・・・せめて「やめてもらいたい」。
とは言え、わたしは「ありがとうございます」と、一口飲んだ。わたしは千一ではないので。
この矛盾?ではないかな?わからん。でもわたしまでが飲まなかったら、まるで矛盾添い(こんな言葉あるかな?)みたいなので、口をつけた。
千一には、手持ちのペットボトルのお茶を、ストローで飲ませた。
事が終わったからか、彼はお茶をごくごく飲んだ。ずっと水分を取らないできたのだ。のどが乾いていたのだろう。(ナマイキな表現だけど、わたしが千一の親だったら思う「なんとけなげなやつだろう」と!)
会議室を出て、ロビーを出て、千一は初めてトイレを使い、外に出て、車に乗った。
社内では、わたしはすっかりリラックスして、またまた千一とバカ話をして大いに笑っているうちに、市役所に着いた。
千一は音声キーボードを車中では使わないので、文章になった言葉は言えないが、一言や、あいまいな発音ていどでも、結構会話が成り立つ。こっちは勝手に言いたいことをしゃべっているのだが、しっかりと意思疎通があって弾む。
千一はよく笑う。単純な話でも体を折り曲げて笑う。退屈なはずの帰りの車中でも、ずいぶん楽しく語り合った。
あとは、待てば海路の日よりかな。
さあ〜どうなるかな、待つしかない。人事を尽くして天命を待つ。
1日、2日、1週間、2週間、1ヶ月・・・長かったです。