ミヤマキリシマ山行(9)坊ガツル恋歌

ゆるい登りはあったが、全体的に歩きやすいハイキングコースといった感じで、気持よくどんどん進んだ。途中、ちょっとした休憩所があり、登山者がたが休憩している。

先頭のM、「こんにちは〜」と挨拶して通り過ぎる。ベンチがあっても見向きもしない。1時間くらい歩いたら、わずかに小雨がぱらついた。雨具を装着するほどでもなかった。

この山道は雨になると泥グチヤになるそうで、とことどころその形跡があった。登山道も崩れて変更されることが多いそうで、「以前の道ではないな、こっちを歩くようになったのか」と、彼らは時々つぶやいていた。

「雨が池」で休みましょうかね」とMが言うのを聞いて、「よかった、休める」と思った。「雨が池まであと200m」という道標を見ながら、せっせと歩いた。けれど・・・

もう200mどころでなく歩いたはずなのに、我々はまだ歩いていた。

出発して90分も歩いただろうか、ようやくMが立ち止まり、「ちょっと休みましょうか」と言う。ただの道なので、なんとなく立ったまま水などを飲んだ。

「雨が池は?」と聞くと、「さっき通り過ぎたよ」と言う。そうだよね〜広がったきれいな場所、あったよね〜「ここ、いいなぁ〜」と思ったけど、あれが雨が池だったのね〜

Sがタッパーに入ったオレンジを「どうぞ」と差し出してくれた。ひと袋ずつ、きれいに皮がむいてある。
「娘がむいてくれたんです」と言った。「ちいちゃん」だそうです。
ありがとう、ちいちゃん。

野遊がミルクのキャンディーを二人にあげたら、彼らは「ふうん・・・」という感じで受け取っていた。オトコドモにはミルクのキャンディーなんてあまり嬉しくないのかもね。

野遊は普段はキャンディとか食べないし、山用に買ってもあまり食べず、なかなか減らず、このキャンディー、実は一年前に買ったものなんですけどね。えへへ。

しばらく行くと目の前が開け、坊ガツルに出た。芹洋子さんが歌った『坊ガツル恋歌』。題名を覚えている。地元の人たちはこの歌を愛していることだろう。本当に恋の歌を口ずさみたくなるような、美しい草原だった。あそこ、ここに、ミヤマキリシマがキラキラと咲き溢れていた。

テントはいくつも張られてあり、避難小屋、水場、トイレなども設置されてある。シーズン中はここがテントの花盛りになるそうだ。夏も秋もそれぞれの登山シーズンながら、ミヤマキリシマがあるので、この6月もシーズンなのだが、それにしてはテントの数が少ないそうで、それは天気予報によるものだろうとSが言った。

そしてすぐ上にバンガローが建ち並び、その先に法華院温泉山荘が見えてきた。

4時半到着。なんと長者原から2時間で来てしまった。