安達太良連峰(2)野地温泉

9日の土曜日はやはり雨だった。10日の午前中に出発して新幹線で駅弁を食べながら福島まで行き、そこから野地温泉のお迎えバスに乗った。

バスは広い舗装道路を山に向かってどこまでも走り、やがて前方右手に吾妻小富士が美しく登場した。

野遊は地図を頭に浮かべながら、バスがどういう方向に走るか考えていたら、急に右折したので、「そんなはずはない」と、ぎょっとした。そしたらお店に寄って、運転手さんが果物を1箱買った。お使いだった。そしてバスは元の道に戻って、またまっすぐ走りだしたので、野遊は、自分のカンは素晴らしいと思ってひとり悦に入った。

それからも道が別れていたりするたびに、吾妻小富士の位置などから、野遊はバスがどっちの道を走るか、先にわかった。で、ますます得意になった。

猪苗代への道路と別れた。そこからは山道だ。バスがジグザグに登って行き、ある曲がり角から突然紅葉だった。

野地温泉までは小1時間かかった。14時半到着。

野地温泉はズラズラと大きなホテルだった。野遊が生まれるずっと昔から、ひなびた湯治場として親しまれてきたようだが、いい温泉だったので、登山者、地元民、遠くからの旅行者と、いろいろな方面から利用され、栄えたようだ。登山者用の、できるだけ安い部屋を予約したかったが、ギリギリの申し込みだったため、旅行者用の高級な部屋しかないとかで観念。

部屋に案内されるとお菓子とお茶があり、お菓子を食べてから外に出て、明日歩く予定の登山口をちょっと登ってみた。

あとは温泉三昧。ゴスケとは夕食時間を打ち合わせて別れ。

いくつかお風呂があり、どれも個性的で、湯量も豊富だった。地元のお客さんと話をしたが、ここはしょっちゅう利用したくなり、バスで来て、明日バスで帰るのだそうだ。野遊も友達と、そういう旅行もしてみたいと思った。