Sureshの夏 30 終章 秋の約束

3週間はすぐに過ぎてしまった。

鎌倉鶴岡八幡宮周辺の散策。ご近所の、ちいさな工場見学スポーツクラブにズンバを踊りに行った江の島水族館でイルカショー見学。江の島の海や近くのプールで水遊び(シュレスは泳げない)。河口湖でカチカチ山をロープウェイで登り、遊覧船に乗る。富士山を背景に記念撮影。野遊の姉夫婦と4人で城ケ島にドライブ。野遊の親族と9人で藤沢で納涼会ゴスケと2人で大菩薩峠に日帰り登山して温泉に寄るゴスケと3人で箱根にドライブして神山に登り、大涌谷見学。野遊と甲斐駒に登る。そしてその合間に日本語の勉強。

野遊はシュレスと朝日雪倉岳を行きたかったが、お天気の都合でかなわなくて残念ではあった。シュレスに、あの「ものも言えず動けなくなるような美しい景色」を見せたかった。でも思いがけず甲斐駒に行けたのはラッキーだった。
全体的には、すごく中身の濃い「シュレスの夏」だったと思う。
シュレス、楽しかった? いい体験になった? 野遊はシュレスに会えて、とてもうれしかったよ。

出発日8月25日、ランチタイムに、急にゴスケが学校から帰ってきた。そして野遊がスパゲッティを用意しているのを見て、自分の分だけホカホカ弁当を買ってきた。何だそれなら3人でどこかに食事に行ったのにね。
ゴスケはシュレスに「この30日は長かった?短かった?」と聞いた。「僕はねシュレス、とても短かったよ」と。シュレスに、この意味がわかっただろうか。多分わからない。ゴスケは食事が終わると、すぐに学校に出かけていった。シュレスにもう一度会うために、お昼休みを急いで帰ってきたのだ。1時間では少し足りないが、今は夏休みなのでそれができたのだろう。

出がけに下の姉から電話があり、シュレスは「Thank you for coming sometimes to teach me(何度も来て教えてくれてありがとう)」と言った。いじらしい。

藤沢駅に送っていくと、シュレスはトイレに行きたいと言い出し、緊張しているのかもしれない。デパートの中のトイレを探して、高速バスの停車場で待っていると、地元の野遊でもグルグル迷ったのにシュレスは普通に戻ってきた。

バスが出るとき、野遊は3月のツアーでガイドさんからもらったカターがあったので、それを持って行き、シュレスの首にかけた。「元気でね」。

10月にまた会えるから今、こうして別れることができるのだ。でもシュレスが乗ったバスが発進してしまうと、野遊の目から涙があふれてきて、両手で泣いてしまった。
シュレスシュレス、元気でね元気ね元気でね。
きっと立派なトレッキングガイドなってね。そしていつか結婚して、幸せな人生を歩んでほしい…