ふたつの別れ・・・パクさん「君がいるから青春だった」

ダーク・ダックスのトップテナー、パクさん。

野遊は小学生のころからダークが大好きだった。
ジャニーズ系のが流行しだして、友達からは「おジン好みか〜」とか笑われたりしたけど、姉に連れられて何度かリサイタルにも行った。

大人になってからは友達と、家族と、最近は娘と(その友達も連れて)リサイタルに行っていた。

リードテナーのマンガさんが病気で抜けてしまってから、ダークのハーモニーは大きく変わりはしたが、そのよさをきれいに引き出して、みごとなボーカルを奏でていた。

力強いゴスペルをいくつもいくつも歌い続けたクリスマスのリサイタル。優しい唱歌をため息が漏れるほどたおやかに歌った春のリサイタル。そして、ああロシア民謡。大合唱を、一人で口ずさめるようにしたのはダークダックスだ。

告別の式は10時半からで、出棺が12時だそうで、出棺だけでも送りたいと思い、12時に行った。セレモニー会館の前には、すでに人だかりがあり、30分遅れた出棺の間、だれひとり動かず、話し声も漏らさず、白いハンカチさえも人目につかないように隠して握り締めていた。

出棺は微かに『絆』が流れてきてから行われた。
「君がいるから青春だった 君がいるから温かい・・・」
この歌がデビューしたリサイタルも、覚えている。

皆さん手を合わせ、ついにすすり泣きさえ起こらなかった。悲しみは必死でこらえるよりもなお前に、悲しみは、このようにして押し沈めるものでございます・・・

さすがダークのファン方、おみごと。日本人魂の真髄を見た。長い間ダークの歌を聴いてきた人々が、送る日に、思わず為した敬愛の表明。

野遊は激しく悲しかった。子供のころから大事にしてきた宝物を失ってしまった。
最後のリサイタルは、娘が卒論で忙しいとかで、行かなかった。そのまま取りあげられてしまった思いだ。

失くしものが増えるばかりのこれからだろう。でも、キラキラと輝いて生まれる小さな命たちもいっぱいある。元気を出さなくちゃ。これからも、手元にあるダークダックスの歌を聴きながら。