朝日連峰 この秋 7 「ストック」

ストックを、山じいの車の中に忘れてきてしまったようだ。
山じいからのメールで知った。
ぼうっとしていてよくわからなかったけど、ストック、ないなぁとは思っていた。

23日夜、鎌倉に帰ったとき、「今日はゆったり館で入浴したからいいや」と、そのままベッドに入ってしまった。すぐにも寝たかった。
でも「あそこを本当に歩いたのだなぁ」と次々場面が浮かび、喜びがよみがえり、自分が四次元空間にいるみたいな感じだった。
それなら起きて、片づけようかと思っても、その気力はなくて、横たわったまま目が冴えて、朝の4時になってしまった。
それからの時間は記憶がない。

ふと気がつくと、明るくなっていた。もう少し時間があるな、と、じっとしていた。そうしていると、また場面がよみがえり、どうしてだか、シクシク泣いているんだ。ちっとも悲しくなんかないのに、支えきれない感情に包まれてしまうんだ。
でも時間が来て、今日の予定の業務に出かけて行った。

イベントの司会で、2時間の短い業務だ。終わってから、昨日不在のようだったがどこかへ行っていたかと聞かれ、東北の山に行っていましたと言うと、スタッフがたが心配そうな顔をする。わざわざこんな時期に東北なんて、空気がどうの、水がどうのと言うので、空気をいっぱい吸って、清水もいっぱい飲みましたと野遊は答えた。皆さん(悪気なく)どっと笑った。野遊を無知だと思ったのか。無恥なのはあんたがたでしょうよワルイけど。

ストック、残りたかったのかな、山じいのそばに。
ストックがこの仕事をして、野遊が山じいのそばに残りたかったよ。