鈴鹿の鋭鋒 鎌ヶ岳  2/no,6 「個性豊かな兄弟たち」

鈴鹿山脈は、どういうわけか、一気に縦走ができないことになっている。1山1山の登山だ。稜線に水がないこともあり、小屋が建たなかったのだろう。それに伴って、つなぎの稜線への整備が施されなかったのだろう。そのせいもあって、鈴鹿の山は1山1山にファンを持つ。その特徴と共に重要視され、登山者にも、登山しない地元の方々にも、1山1山が個性を持った異質の兄弟たちのように大事にされている。

鈴ヶ岳、鈴北山、御池岳、藤原岳、銚子岳、静ヶ岳、竜ヶ岳、三池岳、釈迦が岳、猫岳、水晶岳、雨乞岳、綿向山、入道ヶ岳、宮指路山、仙ヶ岳・・・

稜線縦走がしにくいといっても、たとえば水沢峠あたりから鎌が岳を経て御在所へ、とか、藤原岳から御池岳へ、など、多少は縦走できる稜線はあるのだが、交通の便を考え合わせると、なかなかそれも難しい。

また、マニアックな登山者がそのつなぎを克服して歩くとしても、なかなかどうして地図にはしっかりと縦走線が引かれてあっても、整備されていない稜線に四苦八苦するとか。もちろんそういった登山者方、決して一気の縦走を為せるわけではなく、何年かかけてのぶっちぎり縦走だ。つまり「むずかしい」。

鈴鹿山脈のほぼ真ん中にそびえる主峰の御在所岳は、すっかり観光地化していて、冬でも頂上まで、ゴンドラとリフトを乗りついで旅行者が行ける。この御在所岳への登山道が、奇岩が多い。御在所岳そのものは岩の山で、岩壁登攀でも愛されている。途中からリフトに乗ったりもできるからか、軽装登山者も多いそうで、皆が楽しめる山、ということか。特に紅葉時は混雑するそうだ。このように開けているのは御在所岳のみだ。なんとも不思議なバランスというかアンバランスというか。

どこから見てもはっきりわかるのは、山腹にゴンドラの白い鉄塔が立つ、この御在所岳であり、そして、その少しはなれたところに、鋭く突き立った鎌ヶ岳がある。
鎌ヶ岳。鎌ヶ岳があるのだ。