鈴鹿の鋭鋒 鎌ヶ岳  5/no,6  昭文社の「山と高原地図」

岳峠から見あげる鎌が岳はやや左手にある。そちらに向かって進む稜線は、荒れているそうで通行されていない。いったん右手のカズラ谷コースに下山して登り返し、それからまっすぐ鎌が岳に向かって行く。

ガイドブックでは説明されてあるが、地図は、最近のものでもそこが記されていない。知っている人にはどうということないだろうが、我々は双方鎌初体験者で、鈴鹿に詳しいほうでもない。
右手の下山道に下って行ったが、ずんずん下るうちに心配になってきた。友が「目的地と反対方向に、こんなに下るのはヘンだ」と言う。「それにどう見ても、これは下り道だし」と。

急降下の狭い道で立ち止まり、地図を広げた。友人は、やや足場のある場所で立ち止まったが、その前を歩いていた野遊は立ち止まる場所がなく、体を道にもたせかけて木の枝にかろうじて足をかけている感じだった。そんな体勢で地図を出せたのは、野遊は前ポケットに、地図のコピーや、ガイドブックの説明文をコピーしたものと、その裏面に最新のネットで調べて書き出したメモをたたんで入れておいたからだ。

「右手にしばらく下ってから登り返す」「まっすぐ行く道が見えるが、危険」という内容のところを読みあげるが、友は「それにしても下りすぎるような・・・」と疑問を持ち、登り返してもう一度点検することになった。
一緒にフウコラ登り返し、再び点検したがそれらしい道はなく、やっぱりここを行こう、と下り出した。

やがて道は二手に別れた。このまま右に下ればカズラ谷、雲母峰への下山路であり、左に行けば、多分鎌が岳への道になるのだろう。

ここで、初めて登山者に出会った。下から登って来た単独のおじさんで、汗だく。

友人が「鎌が岳はこの道でいいんですよね」と聞くと、おじさんは「さあ」と言う。「あの、どちらに行かれるのですか」と聞くとおじさんは「鎌が岳」と言う。ヘンなの。でも、おじさんは登ってきたのだから、今下って合流した我々が道をあけようと「どうぞ」と譲ると、おじさんは休めそうな場所でもないのに、「休む」と行って動かないので、先に行くことにした。

このおじさんには鎌が岳で長い休憩を取ったが会わなかった。

しばらく行くと稜線に出て上の道と合流した。じっと岳峠の方向を見ると、どうやらやっぱり、そっちからは歩けそうにない感じだった。地図にはそのところは載っていない。鎌の手前を右に回って登るところはもちろん記載されてあるが、岳峠分岐から、カズラ谷の道に通じるところが記載されていない。岳峠にも、下った分岐にも、指道標あるいはそれに準ずるものもない。せめて木の枝とか、何か示唆されてあれば、初めての人も迷わないのになと思った。

まあこういうことを、朝日連峰で主張したら「だったら来るな」とか言われそうな気がするが、鈴鹿のお山はもっとポピュラーで親しまれているので、地元の整備の方々に、このことをお話してみたいと思う。

朝日連峰の地図も「ここの部分、書いてない」というのに気がついたことがある(野遊はこれで大変な苦痛をこうむった)。
今は登山用の地図はだいたい昭文社の「山と高原」シリーズだ。以前は山渓からも出ていたが。(野遊は山渓派だった)

こんど、今年の最新版をチェックして、まだ間違ったままだったら来年のために、お知らせしておこうと思う。実際に体験した人たちが口ぞえしていけば、より正確な地図になっていくはずで。