朝日連峰北方 33 鶴岡へ

野遊の手の腫れはだいぶ治まって、ゆるくならグーができるくらいになった。
手がすっかり日焼けしている。それに小さな傷だらけだ。山で野遊は手袋をはめる習慣がない。持参してはいるが。
寒くないのに手袋をするのは、歩きながら手先が熱くなって気持悪かったし、岩は素手でないと怖かったし。それにせっかく山にあるものを、石も木も草も土も、布越しに触れて過ぎるのは心ない気がしていたのだった。指の出る手袋を持ったこともあるが、今回はちゃんとしたと山用?とうたわれている手袋だった。でも使わなかった。

今、最初から手袋をしている登山者の姿を多く見かける。それ用の手袋も、昔よりずっとたくさん出まわっている。そういえば、山じいも日暮れ沢から出発するとき、もう手袋をしていた。山じいはあの道で何かに触れるわけでもないのに、どうして手袋をしていたのだろう。お手々を外気から守っていたってか?

でも野遊の手は、現にこんなにダミダミになっちゃった。手もがんばったんだな、これからは、なるべく手袋をしてあげるわね、ごめんねとねぎらった。

朝日屋旅館の前から鶴岡行の路線バスが出るのは9時過ぎなので、時間がゆっくり余っている。

朝日屋さんの若主人は、今ごろ以東で道の点検とかしているのかしら・・・
水も汲みに行ったのだろうな。
今朝早くに出発した同宿の登山客は、もう大鳥を過ぎただろう。

準備を終えて、ザックを玄関口に置き、少し散歩した。
やがてバスが来て、女将さん方にお礼を述べ、一路鶴岡へ。
鶴岡から新潟に出て新幹線に乗ったので、登山中にあんなに食べたいと思っていた山形のお蕎麦を食べないまま帰ってきてしまった(>_<)