裏剱(16)レクチャー

登りが続くと、ガイドは「2分の立ち休!」などと指示して、我々を休ませてくれた。そんな折、ガイドはちょっとしたレクチャーをすることがある。

*〈ストックが邪魔な場合の処理法・・・脇差のようにザックの腰ベルトに挟む。いちいち仕舞ったり背負ったりすると時間がかかるし危険だから〉

*〈ストックを持つなら持ったまま上手に持ちこたえるべきであること。仕舞ったり出したりはしないように使い慣れること。〉(野遊はストックを使用していないが参考になった)

*〈ダブル・ストックを使用すると脇があいて、力が入らないから避けたほうがいい。〉

*〈ザックの腰ベルトはしっかり締めること。それによって肩が自由になる。胸ベルトは、いつも締めつけていてはいけない。肩紐に融通が利かなくなるので、使用は臨機応変に。〉

*〈腕を組んで歩くのは、腕から先の血流を悪くしないためでもある。手を下にして歩いていると浮腫みがくる〉・・・これについては、野遊が思うに、彼はよく腕を組んで歩いているが、重そうなザックを背負って、バランス感覚の優れた人なのだ。

*〈雨具は最初からジッパー、チャックなどを開けてパッキングすること〉・・・なるほど! 思わず唸った。そうだ、外で雨具をつけるとき、ジッパーは開いたままのほうが速い。

このガイドが8の字にしたザイルをぴっちり腰につけて
レクチャーするときの姿はかっこよかった。
ここにいる参加者全ての人を責任以って目的地に送り届けてみせるという気迫が感じられた。