裏剱(33)欅平に着く

我々の行列の後ろを、昨日の女性二人組がずっとついていた。彼女たちは剱沢でも一緒だった。それは、我々が先を歩いているほうが安心感があるからだそうだ。混じれば面倒がられるはずのツアーが、他人様のお役に立ててにっこり。 

欅平の駅が足下に見おろせるようになり、ずんずん下って行く。13時過ぎ、ようやく青い屋根が目の高さにまできて、欅平に着いた。

先に到着していた添乗員K氏と、先頭を歩いたガイドが並んで立った。到着する参加者一人一人に、握手の手を差し伸べる。「おめでとう」と言われ、思わず目頭が熱くなった。歩いたのだという喜びが、ふつふつと胸に込みあがってきた。
ありがとう、ここまで歩けました。ありがとうございましたと、スタッフの方々に、野遊は心からお礼を述べた。