ヒマラヤ山行 (13)現地の生き物 ゾッキョの話 Ⅰ「エヴェレスト糞道」

野遊はゾッキョを見るのは初めて。ヤクも初めて。
格の順では牛、ヤク、ゾッキョだ。
ヤクはゾッキョの片親だから、ここに一緒に書く。
雄がヤク、雌はナク。雌は乳牛として生きる。
ロッジでヤクのステーキが出る。ネパリは牛を敬うから自らの手でヤクを殺さないそうだけど。重い荷を運ぶだけ運ばせて、あとは殺して食べちゃうのか。

ゾッキョは、雄がゾッキョ、雌がゾム。ヤクと牝牛をかけ合わせた。人間が荷運びの道具として役に立つ動物を開発したのだ。乳牛用に赤ちゃんは産ませるけれど、その子はすでにゾッキョではない。だってゾッキョはヤクと牝牛の子だけだからね。なのでゾッキョが産んだ子は、生まれて一度ミルクをいっぱい飲ませてから餓死させるそうだ。(せめてもの愛からではなくて、乳の出をよくするため)

ヤクとゾッキョが荷を背負って山道を通る。荷に縛られ、まっすぐ歩けと声で脅されたりムチで打たれたりするけれど、排泄だけは自由だ。
音に聞く「エヴェレスト街道」は、歩いてみると糞道(ふんどう)だ。そこここなんてものじゃない、まさに糞の道。

歩きながら元気な鬼コンダクターが「00が見えてきました!」とか言ってみんなが「おお…」と見あげるときも、野遊は下を見ていた。うっかりすると踏むからね、まるで道幅狭しと敷き詰められたようなヤクとゾッキョの、登山靴サイズに大きな落し物たち。山を観賞するよりも野遊はヤクゾッキョの糞を踏まないほうを選ぶ。
てことでコンダクターの解説を無視、全然「参加」しないで歩いていたら、次の休憩でコンダクター「あの山の名前は?…エリ子さん」と、わざわざ野遊を指名するじゃないですか。なんなんなんなのこれ(≧∇≦)~~ 糞と奮闘してたんだから放っといて(~.~;)!

野遊の前を歩く人たちも踏んでいたヤクゾッキョの糞。後ろで目にする野遊はそのたびに「あああ〜」・゚゚・(>_<;)・゚゚・と総毛だつ。

野遊も踏んでしまったことあり!歩きにくい登り道で、うっかり雪の下に隠れていたやや硬めのものをゾク!ああ〜なかなか立ち直れるものではない。普段だったら靴捨てる。

誕生まもないものは目立つし除けやすいが、ちょっと古いものは土に交じって見分けにくくなっていて、踏みやすい。というかそういうのはもはや糞ではなく土糞道(なんて読むの、どふんどう?)、すでに「道そのもの」であってその「道そのもの」ごと歩くのだ\(◎o◎)/!

もっと古いものは土と同化して、彼らが食んだ草の筋が残って、この、一度彼らの体内を通り抜けた草の筋が舞いあがる。同時に、カベカベに乾いて粉となった糞も土埃に交じって振りまかれ「風と共に舞いぬ」(;´・`)=3

だから勇者たちの登山録に「喉を痛めた」「声が出なくなり」「咳込む」などなど多く散見されるが、高山病の症状かと思ったけれど、まずはこれだったのだ!

あるクライアントが「それは、都会の排気ガスのようなもの」と言った。なるほど。車輪は通れないこの登山道で、村落から村落へ荷を運ぶのは人間かゾッキョたちなのだ。
彼らの道を、アタッカーやトレッカーが歩かせてもらっているのだ。彼らもそういった旅行者で潤っている。それで現地の人たちは我々を邪魔者扱いしないのだ。

踏まない踏みます糞です粉砕です奮闘です(>_<)