ヒマラヤ山行 (20)  パルスオキシメーター

朝夕、食堂に集合して小型のパルスオキシメーターで血中酸素飽和度数を自己測定して健康手帳に書き込む。それを優秀な鬼コンダクターが集めて、夜チェックして、朝また食堂に持ってくる。クライアントがめいめい自分のを取り出してパルスオキシメーターの使用順を待ちながら自己測定して記入する。毎日この繰り返し。

2000mでは90くらいだった野遊は、3000mを過ぎると84になり、4000mになると77になってしまった。説明会の時点で、65を切ったら即下山という約束が為されていた。

数字は絶対だ。それは内部でじっくり悪さをして、急に動けなくなったりするそうだ。以前、行動中に遅れがちだったクライアントの血中検査をしたら64だったので、見た目元気そうだったけれど、シェルパをつけてロッジまで引き返させたところ、途中で突然意識不明になり、ヘリコプターのお世話になったことがあるそうだ。

ナムチェでガモウバックの説明会があったが、これは緊急手当てで、バックに入ってコンダクターやシェルパが交代でバグを踏んでもそのまま立ち直って出てくるということではなく、その状態でヘリを待つのだ。そして必ず間に合うとも限らない。

行動中に上空をヘリが飛んでいたり、馬やヤクが人を乗せていたら、それはたいてい遭難救助なのだ。トレッキングロードではたいてい高山病だ。もっと高所では滑落とかが入ってくるけどね。

今回も高度があがると、野遊だけでなく皆さんもそれなりに度数が下がってきたようで、中には70を下回ってしまったクライアントもあり、「明日の様子を見てからにしましょう」と明るく言いつつも、優秀な鬼コンダクターは秘かに憂い、明日もこのままだったらいかにせんといったところだろう。

朝になって「お、あがってますね、ああ〜良かったですね」と、目をパチクリしながら胸をなでおろす鬼コン。というシーンもあった。

野遊も、呼吸はお任せと思っていたけれど、パルスオキシメーターの数字は日々じんわり下がっていくし息苦しい。示唆してくれるパルターに振り回されて感じる息苦しさなのだろうか。それとも連日の寝不足、ジゴクノトイレ、食欲不振などが心身を痛めているのか。

次回は「ダイアモクス」です。