ヒマラヤ山行 (22)毎日シャリバテ?

大体何でも食べられるはずの野遊が、なんでこうなるのというほど食べられなくなって情けない。食欲がないわけではないけれど、シェルパがたが作ってくれる食事に拒絶反応を起こしてしまう。匂いが漂ってくるだけで「あ〜も〜ダメ」という気がしてくるのだ。これは不眠が続いた前半以降、徐々にそうなっていった。

食事は、ロッジに着くと、コック長がキッチンボーイに指示しながら、ロッジの食器と食材を使ってクライアント用にお料理を作ってくれる。だからロッジの食事メニューから各自が注文するのではない。

帰りにサービスで日本的料理が出た。スープがうどんだった。それとタイ米でなく宮城米だとかの肉なしカレー。さすがに肉は傷むから持ってこなかったのだろう。けれどそれは下山にさしかかってからのことで、野遊が食事に一番苦しんだ登路の1週間ではない。

毎回、食事の前にスープのようなものが出る。朝はツアー会社で用意してくれたサービスなのか、インスタント味噌汁の袋が配られてお湯に溶いて飲む。飲み切るとそこにお粥がごってり盛られ、そのほかにトレーにお料理が運ばれる。せめて最初のお粥までは食べよう、よそってくれるキッチンボーイに「ハーフ」と告げるのだが、なかなか完食できない。

昼食に添えられるスープは、テロテロの煮込みインスタントラーメンで、このインスタントの味がとっとと鼻についてしまい、顔を近づけるのも苦しかった。そのあと、またまたトレイに運ばれてくるお料理。「あ〜も〜ダメ」

夕食はたいてい、ニンニクとジャガイモのドロッとしたスープで、これもダメ。たまにトマト味のスープだったけれど、すっかり拒絶体制の整ってしまった野遊の脳が受け付けてくれない。「あ〜も〜ダメ」

胃に何か入れなければならない。トレイに乗っている茹でたジャガイモを、何もつけずに少しずつでも食べていたときはまだよかったが、やがてそれもできなくなった。

お腹に力が入らない。持参したソイジョイやドライフルーツを食べ、これは今、野遊にとって、これしか食べられない状態なので、とても貴重な食糧だわと思った。

ああソーメンが食べたいな、モリソバも〜、ただのつゆの素だけでもいいから。とか思えるので、何も受け付けない状態ではないようだ。そうね、ソイジョイが食べられるのだから。この「現地料理がダメ」なのだ!

お腹が気持悪い。食べていないのに胃が重い。ふうふう。体が弱っているからだろう。ふうふう。これは胃薬の分野らしい。ふうふう。でもよくわからないのだ。ふう・・・

次回は「薬の話」