流氷旅行 9 チゴイネルワイゼンは流氷のドラマ

流氷にまつわることでは『北の国から』(1980年代〜の、富良野を舞台にした倉本聰監督のテレビ連続ドラマ)の再放送を、最近CSで放映していて、野遊は初めて観たが、以前からの評判どおり、心を打つシーンが組み込まれた作品で、後期のシリーズに流氷のシーンがあった。人間が流氷に乗って海岸に戻ってくるシーンだった。このドラマの中に登場した『南極物語』という映画にも、流氷があった。犬が流氷に流されるシーンがあった。

流氷。サラサーテ作曲『チゴイネルワイゼン』は、中学生の音楽の授業が最初だったが、あのとき野遊が、流氷を思い浮かべながら聴いていたのを思い出す。あのころはまだ、流氷を知らなかったはずだけれど、野遊の心の中には、大きな氷の塊が、海を埋め、静かに浮いたり流れたりしているシーンが浮かんだのだ。野遊はたくさん小説を読んでいたので、どこかにそのシーンがあったのかもしれない。

チゴイネルワイゼンの1部は夏、2部が秋、3部の冬は、徐々に固まって、やがてひったりと動かなくなっていく氷の姿を思い描いた。それはほとんど無彩色のシーンとなっていった。
明るく力強い第4部は、春を迎えた海で、氷が一つ一つ動き出し、ぐいぐい泳ぐように流れ、どんどん海に溶けていく姿が浮かんだ。と同時に地面から、若芽が次々に吹き出て、まもなく美しく晴れやかな、色とりどりの景色になっていった。

北の果ての海の、夏秋冬春を1部から4部で奏でたチゴイネルワイゼン。今もあの曲を聴くと、野遊の中の流氷物語が目に浮かぶのだ。

氷の世界は、今の日本は羽生結弦。「君の演技は1万ボルト、氷に立った最高の天使」。21歳の彼はシュレスと同い年だ。