ヒマラヤポカラトレッキング10「ロータスレストランのカズ」

 

 フジホテルのパラデップさんは野遊の肩を抱いて「今日は荷物が届いていなかった」「心配しないで明日また来るように」と言った。心配しないでと言ったって…力が抜けていく。

心配だらけの夜が来た。でも昨日のアラティホテルにいたときよりは、気分は楽だった。それはパラデップさんとインペリアルGHのマスター夫妻と、シュレスたちのお陰だ。

4月20日
お昼過ぎに到着便があるので、それまではまた街を歩いた。家を出てからまさに着の身着のままだ。

インペリアルGHの前の細い道を大通りに出ると、タメルのメインストリート。太く3本あるうちの一番端の1本だ。そのはす向かいにロータスレストランがあり、昨日も寄ったがカズの姿がなく、帰ってきた。

カズとは、ロータスの出入り口の椅子に座っている真っ白な髭を垂らして髪を後ろに縛っている日本人のおじいさんだ。何歳かは不明。何度か出会ううち、知り合うようになった。
いつもトレッキングの前に、カズに会って話をする。個人で行く場合、誰かと話をしていくのは、何かあったときにいいと思うから。
現に2015年の春、エヴェレスト街道をソロで行き、ネパール80数年ぶりという大地震に遭遇した時、カトマンズに戻ってカズと話をした。カズは野遊を見て、どうしたことかと心配していたと言ってくれた。

もし野遊が遭難して、日本女性1名行方不明のニュースが流れたとき、ここに行ったそうだ、くらいは話してくれるかもしれない。周りの人たちにコースを話すようにしている。荷を預けて出発するGHにも。
今回はカズに、荷物行方不明の話をした。カズは、出てこない例も半数はある。と言った。その時はだれも責任を取ってはくれない。と言った。

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カトマンズロータスレストラン。この入り口にカズが座っている。