マナスルBC ヘリトレッキング 16 呼吸法

ハァハァと肩で息をしながら登って行くと、ゆうさんが「止まって」と言う。野遊の指にパルスをつけながら「息吐いて」。

歩きながら急に止まるので、足は前後になったまま。「平らなところに足をそろえて止まって」。「太いローソクの火を、長い深い一息で吹き消すように息を吐いて」だそうだ。つい、ローソクをイメージして思わず体をかがめてフウッと吹くと、「体をかがめないで。普通にまっすぐ立って」と忠告が入る。言われるとおりにやっていて、気が付くと野遊は普通に立ったまま、普通に深呼吸をしていた。

吐く息。吐く息。ジムでも何度も言われる。当たり前すぎる言葉だったけれど、苦しい登りで、つい、深呼吸といえば体いっぱいに吸いたくなるけれど、吐く息。吐けば意識しなくても、一瞬で深く息を吸っている。ごく短時間で一気にふわっと吸っている。で、次に吐く息。もっと絞って吐けるだけ腹筋使って吐く。

「はい歩いて」とゆうさんは言う。パルスの数値が、90になったので。

これをしっかり繰り返せるようになれば、歩きながらハァハァしなくてもいいのだった。