鎌倉駅前の交差点物語 (2)千一に訴えてみたら

自分は、人の話を聞いて、ああそうかと思っても、実際には気遣っていなかったことを改めて思った。もし、自分に関係ないことでも、家族とか、自分の近しい存在の人の話だったらどうだろう。もっと親身になって聞いたと思う。あるいは、その人がわたしに訴えてきたことなら、耳を傾けただろう。迂闊だった。

@さんの話は静かで淡々としていた。@さんは、わたしに訴えるというよりも、世間話をしたのだった。もう散々、こんな体験をしていたのだ。でも今回、共に交差点を渡り、わたしはようやく、@さんの体験を知った。

「千一に訴えてみたら」と、わたしは言った。
「千一?」
「そう、鎌倉市議会議員の千一」
「ああ、車椅子議員の」
「千一は、鎌倉市街を電動車椅子で走りまわって、歩きにくい道を点検しているから」

でも@さんは、鎌倉市の、ある障害者団体に所属していて、その団体から、もう何年にも渡って、鎌倉市に訴え続けているのだと言う。そのたびに保留、却下を繰り返していると。
やれることはやっているのだった。


却下される理由として、あの交差点は、連動したコンピューターで設置されてあるので、容易には変えられないということだそうだ。
この理由は、伝え聞きなので本当かどかは知らないが、とにかく千一に会ってみるように、わたしは勧めた。@さんは承知してくれた。つづく