ミヤマキリシマ山行(16)午後一番、下りの泥道

平治岳の首まで降りて、そこからは坊ガツルへの下り道だ。ここで正午。朝から歩くだけだった3人とも空腹だった。でも座って休む場所がない。晴れていたらどこでも休めるのだけど。

じゃ、坊ガツルまであと2時間だけど、下ってしまいましょうやということになったが、その前に、立ったまま水分補給などした。Mはジェリーの食品(ウィダーin)を、腰のポシェットから出して摂取して、野遊は肩紐につけたポシェットから出した一本のソイジョイ。腰ポシェットは使ったことがない。でも使い心地はどんなものかとか何とか、いちいち想像する野遊でした。

ソイジョイ、半分Sにあげた。Sもザックをおろして紐といてまでは食べ物を出す気がなかったようなので。ハンブンコしたとき、Sが素直?な感じでそれを受け取り、食べてくれたのが、野遊には気恥ずかしいほど嬉しかったよ。

「あれっておいしいね」と、あとで言われたときもね。「あれ」って、山野井泰史さんご夫婦が、恐怖の岩壁登攀の際、食事代わりにする物なんですよね。カロリーメイトが出たことは重宝がられたが、野遊はすぐになじめず、やり過ごした。やがてブドウ味とか出てきて、そういえば単独の蝶ガ岳で昼食代わりに食べたら、(初めてだったので頼りなく感じ、2本食べちゃった^_^;)直後お腹がいっぱいになり過ぎてびっくり困ったことがある。

今はさらに食べやすいソイジョイのようなものがあり、便利になった。野遊は昼食はもっぱらソイジョイだ。もちろん1本だよ。ア、でも2度昼食したりする、状況によっては。いろんな種類を持って行くので飽きない。なにしろ山野井さんが、ギャチュンカン(ヒマラヤ8000m峰14座の次ぎに高い山の、岩壁。つまり世界15座峰)でも食べて登ったんだと思うと勇気が湧いてくる。

さてそのまま下ったところで、とにかくグチヤ道。火山灰の山だそうで。野遊は片足を木の根に取られて、転んでしまった(>_<)。つ、ついに転んでしまった。野遊のトラウマは、昔山岳部で、転べば恥ずかしく、電光石火のごとく起きあがり、あたりをはばからねばならない。単独行で転んでも、どこかの稜線から、だれかが見ていないかと気にするほどだ。

・・・でも、MもSも、「何やってるんだバカ」とか「ふざけて歩くな」とか、言わない。登山靴で蹴っ飛ばされたりもしなかった。若き日の短い期間の体験を、一生引きずっている野遊だけど、このお蔭様を以って今の自分があり、先輩たちに感謝しているんだ。叱らないMとSにも感謝だ。「ア〜ア〜ア〜」と言われたが。

やがて、石が敷いてある道になった。登山者が石を持って登り、泥道に置いて行くのだという。下ると石が積まれてあり、「この石を持って登ってくださいね、がんばって遠くの道に置いてくださいね」というような看板があった。うう〜む、感動的ではないですか!

そして泥ネズミになって1時間で坊ガツルに下ってしまった。