朝日連峰 障子ヶ岳 10「水」

歩きだしてまもなく、そこはわりと平らな道で、ゆるくカーブしているのだが、前方からひょい、といった感じで顔を出した人がある。あれ。ブルーベリー氏だ。夢か。
「迎えにきてくださったのですか」と、思わず野遊は聞いた。
「うん」とブルーベリー氏は言った。
どうしてそのような奇特なことをしてくださったのか、なんだか半信半疑で、「わたしの到着が遅いので、心配して?」と、重ねて聞いた。
「うん」と、ブルーベリー氏は言った。

「大丈夫か!?」とか、「しっかりしろ!」とか、そんな劇的な言葉はない。
なんかすごく自然な感じで、ほっとするものがあった。だから野遊は安心していっぱい訴えた。
「お水がなくなっちゃって、途中で居眠りして、どうしようかと思った」と。

ブルーベリー氏はサブザックから水袋を出して「飲めや」と言った。
野遊は、あのときほど安心した一瞬があっただろうか、理屈を越えた体と引き換えだからね、あんなに嬉しい一瞬があっただろうか。そこにいるブルーベリー氏は、ゴッドそのものだった。
お礼を言って自分の水筒に移そうとしたら、ゴッドは「そんなことしなくていいから、じかに飲みなさい」と。あ、そうですかではでは^_^;、と、口飲みした。

ごっくん、おいしい! 息が続くまで飲み、いっぱい息をして、また息が続く限り飲んだ。あんなにいっぱい続けて水を飲んだのは生まれて初めてだ。その喜びといったらもう・・・
「3リットル持ってきているから、飲みたいだけ飲めや」とゴッドは言う。

そうですかではでは^_^;。なんか横に座ってじっと見られているのだけど、ゴッドなんだからもういいや。

飲み口から水がこぼれそうになったので、かまわず飲みたかったが、それでは西部劇などの映画のシーンみたいなので、ちょっと元の体勢に戻してから、また飲んだ。
体中水浸しになるほど飲んだ。
もういいと思っても気持が飲みたくてまた飲んだ。ふうぅ〜・・・おいしかったぁ・・・

すっかり満足して頭もすっきり、気持もゆったり勇気凛々、さあ行こう天狗の小屋へ!