朝日連峰 障子ヶ岳 14「恩人の名前」

7月17日(日)

晴れ。朝、二階のスペースで渓流釣り連が朝食の準備を始めた。野遊は朝食用のパンを昨夜提供したので、ソイジョイでも食べようか、スープを飲もうか、ニュー麺でも作ろうか、など思いながら、何にするか決めていないままお湯を沸かしていたら、昨夜の登山客が野遊のところに来て、「朝ごはんを用意したので下にどうぞ」と言った。不思議なこともあるものだと、野遊が階下に行くと、天狗さんを囲んで数人の登山者が昨日のように座っていた。


「チャーハンだよ〜」と、キャンピングのお皿にどっかり盛られ、これはどうしたのかな、ちゃんとお米をといでご飯を炊いて、チャーハンの元を混ぜたものらしい。それにおかずもあったけどなんだか忘れた。野遊はお皿にいっぱい盛られ、こんなに食べられるかしらというほどの量だった。でもまだ慣れていなくて黙っていた。皆さんに気前よく盛って、残りを天狗さんが自分のお皿に盛ったら、それは野遊のよりずっと少なかった。でもどう言っていいかわからなくて黙っていた。

いただきま〜すと食べたらおいしかった。大盛りだけど全部食べた。天狗さんはあんなに少しで大丈夫なのかなあ。天狗さんは「草刈がイヤだよ、もう若くないんだから草刈は勘弁してもらいたいけど、志田さんが、そんなこと言わないでやってくれよって言うもんで」とか言っていた。

そう言えば昨夜、ブルーベリー氏が野遊のことを「この人、勝利さんのメル友」と言い、そうではなくてと野遊は言ったが、志田一族は朝日ではほんっとうに有名人らしい。朝日を監督している人たちは朝日屋さんとか、何人かいるようだが、ここら一帯は志田(菊宏さん)のようだ。山じいがその親族かどうか、関係があるのかもしれない。こちらからは聞かなかったのでわからないが。

そのあとブルーベリー氏が出発の準備をしているところに行って、昨日のお礼を述べ、フルネームを聞いた。名前は「やいち」で、思わず会津八一を連想し、「ハチにイチですか」と聞くと、「弥一」だった。なんだかあまりにも朝日連峰登山者らしい名前という気がした。恩人の名前を一生忘れまいと野遊は肝に銘じた。