野遊の将棋物語 4 キュンという愛称の由来(2)

学生たちは、今はもう退学して、ここにいない友を想った。

もしみんながノートを取っていなくて、自分だけが取っていたなら、教授から抜き打ち的にノートを提出するように言われた場合、それは成績において優位な事象なので、そう簡単に友達に貸すことができるだろうか。あいつはそれができた。

あいつにとって成績の競い合いは不要のことだったのだろう。それよりも、少ない時間をこじ開けて大学に行って講義を受けること、勉強することに意義を持っていたのだろう。思えばそれは普通に当たり前の学生なのだった。

ちょっと遊びにかまけて本来を見失っていたような気持を味わった学生たちは、あのときの豊島君の、気前の良さと共に、勉学の本質を思い知らされたような気持になって、胸がキュン、と引き締まった。