2010-01-01から1年間の記事一覧

朝日連峰縦走(13)太陽とガスの協奏曲

行く先が見渡せるって、なんと安堵感のあるものだろう。ガスの上方からチラチラのぞいていた陽が、今は全部降り注いでいる。見まわした。きれいな道だ。長く続いている。広い。大きい。おんもりと雄大だ。 草原のど真ん中! 緑に混じって、色とりどりの高山…

朝日連峰縦走(11)以東岳から狐穴小屋に向かう

遭難碑のある所、以東小屋への下りが始まる手前の左側に直角に、登山道はあった。それはガスで視界の狭まった足元をよく探して、出てきた道だ。「らしく」出てきたならともかく、道幅が半分になった急な下りの直角曲がりで、正道と思えずに思案してしまうほ…

朝日連峰縦走(12)ふり返り、あれがメイン・リメンバーだった

ガスは濃く立ちこめて、騒がしく流れている。歩くほどに風が強まってきた。うっかりすると岩に叩きつけられる。髪が風の方向に顔面を覆う。しばっても風にほじくり返されるようにたちまち踊りだし、顔半分に張りついてしまう。目が片方しか使えない。手で押…

朝日連峰縦走(10)以東岳、以東小屋

オツボ峰を越えたあたりで、岩伝いの道の向こうから二人連れがやってきてすれ違った。「ア」と、向こうから声を発した。それは大鳥池小屋から、早立ちした2名だった。直登コースで以東岳に登って、オツボ経由でマイカーを置いてある泡滝に下るらしい。こうい…

朝日連峰縦走(9)オツボ峰で「ひめさゆり」に会う

7月24日(土)、夜中雨模様だった。4時過ぎ、やはり外は白く煙っている。がっかりしてしばらくじっとしていた。二人組は外で朝食をすませ、4時に出かけて行った。この小屋は二階で火の使用は禁止されている。野遊の朝食は、昨日鶴岡で買ったおにぎり弁当がま…

朝日連峰縦走(8)三角池散策

背の高いブナの樹林帯を登っていく。左手に続く渓流が、だんだん下がっていく。橋を渡り人気のない道は続いていく。七つ滝は名所のようだが、滝見物の人などいなかった。むしろ荒れていて、腐った落ち葉とクモの巣だらけという感じで、とても分け入っていく…

朝日連峰縦走(7)大鳥池小屋(タキタロウ小屋)へ

背の高いブナの樹林帯を登っていく。左手に続く渓流が、だんだん下がっていく。 橋を渡って、人気のない道は続いていく。七つ滝は名所のようだが、滝見物の人などいなかった。むしろ荒れていて、腐った落ち葉とクモの巣だらけという感じで、とても分け入って…

朝日連峰縦走(6)泡滝ダム登山口

鶴岡駅は大きな駅だ。7時40分に大鳥行きの路線バスの始発が出る。登山ブログで、「今から山に入って自給自足になるので、鶴岡駅前のホテルでゆっくり朝食を摂る」という記事があり、野遊も優雅に過ごしたいと思ったが、ホテルはいくつもあって、外来者の朝食…

朝日連峰縦走(5)鶴岡から大鳥へ

鶴岡駅は大きな駅だ。新幹線が通っていないのが不思議なくらいだ。7時40分に大鳥行きの路線バスの始発が出る。どなたかの登山ブログで、「鶴岡駅前のホテルでゆっくり朝食を摂る(これから山に入って自給自足になるので)」という記事があり、野遊も優雅に過…

朝日連峰縦走(4)夜行高速バスで東京から

22時45分東京発、山形経由鶴岡行のバスに乗った。夜行高速バスは、そのあと登山という強烈な印象にぬり込められるので、過ぎてしまえばなんでもないのだが、乗車中は苦痛だ。電車より料金が安いので利用している。今回で4回目の利用だ。休憩時間は途中2度あ…

朝日連峰縦走(3)憧れの朝日連峰!

朝日連峰に行けるかもしれないと思ったとき、不思議なエネルギーがみなぎってくるのを覚えた。行けるかもしれない、行こうと思ったとき、これは酔っ払ったときの錯覚のようなものかもしれないとも思った。今生であきらめていたはずの山だった。山岳部時代な…

朝日連峰縦走(2)朝日連峰にたどり着くまで・北ア、南アを経て

飯豊の向こうに連なる山々が朝日連峰であると聞き、野遊は、この飯豊よりもなお奥深いイメージを朝日に抱いた。けれど飯豊でバテバテの自分の及ぶところではない。いつしか朝日連峰は遠くにありて想う山となった。その年の冬は八ヶ岳縦走で、野遊の夏山参加…

朝日連峰縦走(1)朝日連峰にたどり着くまで・飯豊連峰の思い出

まず前奏曲がある。野遊が朝日連峰を語るには、初恋の山、飯豊連峰から始まるのだ。昔々、野遊19歳の夏、山岳部の夏山集中登山は飯豊連峰だった。何も知らずに参加申し込みをしたが、この山岳部では、夏山縦走は男の殿堂だった。女性が参加できる企画山行…

ミヤマキリシマ山行(30)九重連山 最終章

いつの間にか30章まで書き、無事九重連山を歩くことができた。いつか「光り輝くミヤマキリシマ」に、また会いに行きたいと思う。「ミヤマキリシマに魅せられて、横浜から毎年来ています」という登山者に出会ったが、それだけの魅力を放つ山々だったと思う。…

ミヤマキリシマ山行(28)赤川温泉山荘から瀬の本、熊本、羽田へ

7月15日(火)、赤川温泉山荘の朝は雨だった。朝風呂にのんびり浸かって至福のひとときを過ごし、山小屋とは思えないしゃれた朝食を楽しみ、帰り支度。 ここからは瀬の本に出る。瀬の本に止まるバスは、別府駅始発で牧の戸を通ってくる。あそ号というバスに…

ミヤマキリシマ山行(29)番外事項

旅行についてもそうだろうが、特に登山について思うのは、不明の遠地で、あれこれに発生する料金のこと。不便なところにいるのだから、背に腹は変えられないことがあり。だから仕方ない、という登山者の気持を、提供側が逆手に取ることがある。このたび赤川…

ミヤマキリシマ山行(27)赤川温泉は、蒼い湯だった

赤川温泉山荘の玄関口は、民宿の玄関のような感じだった。ちょっと広く間取りされてある横手に冷たい水が流れている。ベンチがある。大きなセントバーナードが横たわっていた。目が合うと、セントさんは起きあがって、ゆっくりこちらにやってきた。優しい瞳…

ミヤマキリシマ山行(26)オバケが出そうな赤川下山道

下ってしまってからふり返れば普通の歩行で1時間半くらいの下山道だったが(15時20分〜16時50分)、表側?と比べて登山者が少ないからか、なんとなく荒れていた。雨のあとで足跡もないし。ざっとわかるけど、どこまでも続いて行くと、「ここでよかったのかな…

ミヤマキリシマ山行(25)扇ゲ鼻、緑と緋色の海の中

牧の戸と扇ゲ鼻の分岐に着いた。ここか。いかにもほっとして景色を眺めると、 昨日雨の中登った平治岳が赤々と太陽に照らし出されて、燃えるように光っているではないか。嬉しくて胸がいっぱいになる。「Mさぁん、Sさぁん、ヤッホ〜♪」扇ゲ鼻に登っていく…

ミヤマキリシマ山行(24)西千里浜で、トレイルランになる

久住分れから牧の戸峠方面へ行く。朝方登ってきた北千里浜を右に見おろしながら。しばし行くときれいなしっかりした避難小屋があった。大きなトイレもあった。さらにまっすぐ登って行くと、20分も登っただろうか、ちょっとピークに出て、そこから進行方向に…

ミヤマキリシマ山行(23)蛙鳴蝉噪のかわいいヤッホーに包まれて

久住王山から、今来た道を下りながら、野遊は失敗したなと感じていた。お天気にウジウジして、ここまで、もうここまでと足を伸ばしたのだったが、ここは回れるのだ。往復しなくてもいいコースだ。そうすれば稲星山にも立てたのだ。野遊は分岐点から久住、久…

ミヤマキリシマ山行(22)九重連山最高峰、中岳を「久住王山」と命名

青空が広がって、気持のいい「梅雨の晴れ間」となった。分岐点に戻る手前の小高い丘に寄り道して昼食とする。12時。この丘から久住分れに一筋、きれいな道がついているが、だれもいない。下るか?いや・・・中岳に行きたい。急いで行こう。荷物を置いて中…

ミヤマキリシマ山行(21)久住分れの晴天、蝿だらけの主峰久住山

これがかの「久住分れ」か。この地名に惹かれていた。 標識の前の石に腰かけ、歩きだしてからはじめてザックを下ろした。 ふう。ここから赤川温泉山荘に一気に下るつもり。 本当か?空は晴れてきて、ガスの合間に浮きあがったのは、紛れもない久住山! 自問…

ミヤマキリシマ山行(20)海のような北千里浜

山荘の横手から登りだすと、やがて雨があがった。時計を見ると10時。ガスがせわしなく動き、時々陽が射した。こういうときの嬉しい気持はなんとも言えない。でも、まだ一気には見渡せない。このまま登っていいのよねと思いながら、だんだん不安になってくる…

ミヤマキリシマ山行(19)さて行くぞ。モタモタ。

朝も雨。なんじゃい(T_T) 行く気失せるよな! もうやめた。 でも、どうせ長者原まで濡れて歩くのなら、じかに赤川温泉山荘に下ろう。と思った。久住山なんかもう登らないからね。一昨日、Mが「赤川温泉はいいですよ〜、赤川からタクシーで瀬の本に出れば、…

ミヤマキリシマ山行(18)連泊の法華院山荘 三俣蓮華での登山者に再会

別れというのはもの悲しいものだな。旅行や登山は、途中で別れるよりも、途中から合流するほうがいいかも。なんてぼんやり考えながら、一人個室で休んだ。乾燥室に衣服をつるし、温泉に入ってから夕食。スタッフに渡されたお盆を持って、どこに座ろうかしら…

ミヤマキリシマ山行(17)坊ガツル再び。また会おうとも。

入山とは反対方向から坊ガツルに出た。避難小屋が建っている。ガスの中にテントがポチポチ。雨があがった。人工水場に行こうとするも、手前の少し下った川に行こうということになり、ズルズル下って行って、ズボンを拭いた。防水スプレーの威力で、靴にもザ…

ミヤマキリシマ山行(16)午後一番、下りの泥道

平治岳の首まで降りて、そこからは坊ガツルへの下り道だ。ここで正午。朝から歩くだけだった3人とも空腹だった。でも座って休む場所がない。晴れていたらどこでも休めるのだけど。じゃ、坊ガツルまであと2時間だけど、下ってしまいましょうやということに…

ミヤマキリシマ山行(15)ブラボー平治岳

大戸越は、一面のミヤマキリシマ。ガスの合間に浮かびあがる緋色はなんとも美しい。足元からピンクの滝が流れるように続いている。それがガスで見渡せないのだが、動くガスに添うように、あそこ、ここと緋色が浮かびあがり、うっとりしてしばし動けないほど…

ミヤマキリシマ山行(14)ストック使用登山は邪道

下りはじめると風の当たりが弱まり、やがて樹林帯に入った。右手に避難小屋が見える。法華院温泉山荘のような恵まれた宿泊場所を近くに置きながら、どうして避難小屋があるのだろうか。うっそうとした木々の間にぽつんと建っていて、寂しそうだ。 Mが歩きな…