2013-01-01から1年間の記事一覧

温泉から温泉山行 17 竹の茎

大きな岩を越して道に足をついた途端、すいっと足元が縦に動いて野遊は滑ってしまった。 見ると、竹の茎が道の真ん中に、縦に落ちていたのだ。 まるで「さあこれに乗って滑ってください」というように。 これはわざとだ。絶対にわざとだ。なんて意地悪な竹の…

16 不帰(かえらず)の避難小屋から百貫の大下りへ

時間的にもうそろそろというころ、不意に不帰の避難小屋が現れた。11時40分。 お昼までにここを通過するようにとの祖母谷温泉の方の忠告を、なんとか守れて前半はホッと一安心。 ここで昼食にする。ゴスケがまた冷たい水を汲んできた。(小屋の近くにあ…

温泉から温泉山行 15 花、花、花

8月18日(日)白馬山荘5時40分発朝食はお弁当よりも、ちゃんと座って温かいお味噌汁やお茶を飲んでいきたいとゴスケが言い、賛成して5時に食堂で朝食。 ガスが立ち込めているので白馬登頂はやめて、昨日登ってきた緩やかな旭への道に入っていく。 視…

温泉から温泉山行 14 白馬山荘

「はくばさんそう」と言う人もいるけれど、やっぱり野遊たちは「しろうまさんそう」と呼んでしまう。 だって「しろうま岳」だから、そのふもとの山荘も同じ呼び方に。野遊たちは山荘の新館とやらの、3階の階段を上がった正面のスペースが与えられた。 その…

温泉から温泉山行 13 警備隊1号

その地点(突起の下部)に、一人のおじいさんがいた。 さっき、突起の上にぽつんと立っていた人影があったが、この人だ。 痩せていて、白いあごひげを蓄えた何とも風情のあるおじいさんだ。 体にいろんなものを装着している。警備隊員だそうだ。 人のいない…

温泉から温泉山行 12 旭岳

村営山荘を右下に見て、反対側の左へ緩やかに下っていく道をたどる。初めて踏み込む道だ。男性とすれ違ったので、旭への道はこっちですよねと確認すると、彼は雪渓の雪を取りに行っただけだそうで、ビニール袋にいっぱい雪を入れていた。 沸かしてお茶でも飲…

温泉から温泉山行 11 白馬鑓、杓子

白馬鑓に向かうとき、二人連れがこちらに向かって歩いてきたが、見あげると彼らはまさに空中散歩状態だった。やがてすれ違うとき、野遊は思わず彼らに言った。 「お二人があそこを歩いてらしたとき、足から青空で、絵になっていましたよ」 彼らは何とも言え…

温泉から温泉山行 10 カメラの失敗

野遊は写真の腕はまるで素人だが、やはり自分が見た光景は撮影したくて、 デジカメを持って行ったのだが、スイッチを入れようとしたら反応せず、 出かける前日、充電器にバッテリーを置いた状態のまま、カメラを持ってきたことを知った。 猿倉山荘でポケット…

温泉から温泉山行 9 稜線へ!

8月17日(土)晴れ・鑓温泉小屋6時s小屋の左横を登る。稜線まで2時間40分、ひたすら登る。 杓子の赤膚の岩に励まされながら登る。 昨日は小屋のやや裏側にいた杓子が、今は右方に威風堂々とそびえている。 行くからね〜そっちに。ここから見る天狗岩がかっ…

温泉から温泉山行 8 この温泉ですべてが賄える

「この温泉ですべてが賄える」と、どなたの言葉だったか。 寝具のお粗末さも、スペースの狭さも、食事のまずさも、すべてこの温泉で賄えますと。温泉に近づくとトイレの臭気はぐんと高まるし、トイレに行くのも憂鬱だし、 乾燥室もなく、干し物類は小屋の外…

温泉から温泉山行 7 白馬鑓温泉

鑓温泉は、小屋を真正面に見ながらしばし登って行くのだが、下から入浴している人たちが見える。 お風呂のヘリに座っている男性たちが、のんびりとこちらを見おろしている。テン場に近づいていくと、何とも強烈な尿臭がするので驚いた。 テント用のトイレも…

温泉から温泉山行 6 初日の登り 

猿倉荘の左手の、緩やかな道を登って行く。雪渓へと続く道だ。バラバラと登山者が前後にいる。 やがて道は左に分かれ、そこからが白馬鑓温泉コース。ぱったりと人が減る。ほとんどが雪渓に行くらしい。道は次第に急になり、折り返しながら登っていくと、朝の…

温泉から温泉山行 5 後立山連峰の主峰は?

23時新宿発の夜行高速バスに乗り、途中休憩を入れながら6時、猿倉に到着。五竜、八方で下車する人もいる。ゴスケは何度か眠りに落ちたというが、座席に座ったまま眠れる人は、強い人だと思う。野遊の隣座席の女性も、背もたれに体をゆだねたまま寝息を立てて…

温泉から温泉山行 4 祖母谷へのコースを設定する

後立は栂池(2回)、雪渓(2回)、蓮華温泉、八方、針の木(2回)の道を歩いているので、このたびは白馬鑓温泉から入ってみたいと思った。以前下山コースに計画したことがあったが、悪天候のために果たせなかったので気にかかっていた。登山口は猿倉にな…

温泉から温泉山行 3 一般登山路となった祖母谷コース

この祖母谷への道は、いつだか、野遊が読んだ昔の有名人の遭難場所でもあるのだった。それがだれだったか・・・今、思い出せないのがもどかしい。何の本を読んだのかも煙っている。 冬季、白馬から長野側に下山する予定だった男性二人が、吹雪かれて方角を失…

温泉から温泉山行 2 祖母谷コースとは

北ア後立山連峰の、富山側につながる長い下山道に、祖母谷コースはある。唐松と白馬から派生している二本の尾根だ。登りは避難小屋を利用する場合もあるが、下りは一気なので長丁場になる。白馬からは19キロでほぼ下り一辺倒、唐松からは17キロだが登り…

温泉から温泉山行 1、足首治しの四苦八苦

「足首の腱鞘炎」とやら 「桜が咲くころに治りますよ」が「水芭蕉にころには」になり(>_色々な症状を調べて病名にクラ〜としかけたこともあるが、あまり動かさないようにと言われても何しろ足首なので、そうっとしておけば運動不足で体調が悪くなる。スポー…

野遊の2013年の山の歩きだし・・・(>_<)

2013年1月27日(日)、28日(月)霧ヶ峰、美ヶ原霧ヶ峰はアイゼン登山。スノーシューのほうが歩きやすかったかも。 美ヶ原はスノーシュー。美しの鐘を鳴らす(^.^)。両日とも好天。2月10日(日)幕山・日帰り梅見ハイク。3分咲き。2月23日(土)、24日(日)…

裏剱(37)終章・ありがとう、まいたびツアー

新宿が近づいてくる。 添乗員K氏は、なんと我々に丁寧に謝罪の言葉を述べてくれた。それは昨晩、自分がみんなに心配をかけたことについてであって、他のことについては一切触れない潔さがあった。 まいたびツアーで初めて聞く、気持のこもったK氏の挨拶に、…

裏剱(36)走り去る風景

登山靴をパッキングして、小さなポシェットを手に持った。 トロッコ電車に乗って宇奈月へ。ここに見学に来る旅行者たちのように、野遊もいつか、旅行鞄を持って来ようか。 それとも登山者として、下の廊下を歩いてみようか。野遊、いつまで山に登れるだろう…

裏剱(35)怪我婦人と共に、まったり過ごす

野遊と一緒に列の最後尾に着いたのは怪我婦人だ。彼女は添乗員K氏と共に一足先に欅平に着いていたが、我々を待ってくれて、昼食を済ませていなかったのだ。 それが列の最後になってしまうなんて、なんとおっとりした優しい人なのだろう。 時間があるのでゆ…

裏剱(34)欅平駅のお蕎麦

トロッコ電車が出るまでに1時間以上あった。昨日の説明で添乗員K氏が、「欅平駅で各自昼食をとってください。駅にお蕎麦屋さんがあります。1件しかないので、ほかの登山客や、観光客とも混じるから早く並んだ方がいいですよ」と言っていた。みなさんそれを…

裏剱(33)欅平に着く

我々の行列の後ろを、昨日の女性二人組がずっとついていた。彼女たちは剱沢でも一緒だった。それは、我々が先を歩いているほうが安心感があるからだそうだ。混じれば面倒がられるはずのツアーが、他人様のお役に立ててにっこり。 欅平の駅が足下に見おろせる…

裏剱(32)奥鐘山の西壁

やがて対岸に堂々とそそり立つ「黒部の怪人」、奥鐘山の西壁が姿を現した。屏風岩と双璧をなすと言われる大岩壁だ。思わず目を奪われた。 黒部にはほかにも丸山東壁があり、こちらは「黒部の巨人」と呼ばれている。それと黒部別山大タテガビン南東壁「黒部の…

裏剱(31)水平歩道

ひと登りしたところで休憩をとり、雨具を脱ぐ。このまま降り続いたなら、道は難儀したことだろう。天候に感謝だ。いよいよ水平歩道に入って行く。黒部峡谷を右に見おろして、どこまでも人工道を歩き続ける。道幅は十分だが、片面は岩壁で一方が切れ墜ちてい…

裏剱(30)阿曽原小屋出発の朝

4時半に添乗員K氏と顧客1名は先立ちし、我々は5時半の出発だ。朝食はお弁当で、途中で時間をとることになっていたのだが、女性たちは出かける前にすませておきたいと意見が一致して、4時に起きて準備を始め、5時前には布団をたたんだ部屋で、各自お弁当を喫…

裏剱(29)衝突?

今日、添乗員K氏は夕食に出てこなかった。酔いつぶれて寝ているとかいうことだった。実際はそうではなくて、何か気分を害して出てこないのではないかと言う人もいた。野遊はその場を見ていないのでここは不明だ。 夜、ガイドとK氏の口論が筒抜けだった。内…

裏剱(28)話し合う3

K氏は、顧客が何かモタモタしていると、そっと近寄って助言するなど、申し訳ないくらいに丁寧で親切だった。顧客がガイドの言葉に傷つかないように気遣う様子は、何も言わなくとも、我々に自然と伝わってきていたのだ。Hさんも絡んでいたかもしれないことに…

裏剱(27)話し合う 2

その折、ツアー客のレベルが落ちていることが話題にあがったが、顧客に罪はない。顧客のレベルを落としているのはツアー会社なのだ。レベルを上げたければ即、実行できる。厳選すればいい。けれど皆さんがどんどん成長して、個人山行を始めるようになったな…

裏剱(26)話し合う 1

夕食前に添乗員Hさんが女性部屋で、明日は1名(怪我婦人)、添乗員K氏と二人で1時間早く出発すると告げた。 それは欅平のトロッコ列車の時間が決まっているので、全員間に合うように配慮された結果とのことで、了解した。その折、どちらからともなく、ガイド…